僧侶に人生相談?【KAMADOKI2021・SDGs Studios】#5

「生きにくい」「将来が心配」そのような悩みは誰しもが持ち、特別なことではない。何か手を打たないと、心の中に蓄積された鬱憤は溜まり続ける一方だ。鬱憤を解消するために地域の行政が運営している無料電話相談サービスで心の支えとなった人はいるだろう。他にも電話相談の窓口は存在しないかと思った時に目に止まったのが寺院が運営するサービスだ。現在では宗派を超えて10以上の団体が電話相談に応じていることが確認できた。その中の1つに京都市下京区に所在する東本願寺が挙げられる。本願寺に隣接するしんらん交流館に「いのちとこころの相談室」がある。毎週木曜の昼間に開かれ、複数の電話を 研修を受けた僧侶で毎週受けている。一件の電話の時間はおよそ30分ほどだ。僧侶に30分間相談することでどのような効果を生むのかを探るべく、主任相談員を務める松田さんに話を聞いた。

仏教の教えとカウンセリング

「電話相談では仏教の教えを語るのではなく、クライアントの傾聴に徹する」と松田さんは断言した。「あなたを受け入れる」この一言で仏教(浄土真宗)を表せられるほどの重みがある。仏教といえば禅を組むなど厳しい修行が浮かび上がるだろうが一面にすぎない。方向を変えると煩悩を持つなど人が決して克服できない壁が存在することを認めている。浄土真宗の宗祖である親鸞でさえ煩悩や欲望に苦しんだと言われている。そのため能力で判断するのではなく、ありのままの姿で生きることの大切さを庶民へ向けて説いた。存在自体を受け入れる親鸞の信念を念頭に置き、相談員は電話に応じているそうだ。相談員はクライアントが「自身の内面を見つめる」お手伝いに過ぎない。松田さんは「心を映す鏡」と相談者の役割を例えていた。時には解決策を得るために電話をかけたクライアントとの食い違いもあるという。それにも関わらず30分の話を終えたクライアントから「スッキリとした」との声が多数寄せられている。それは日常では聞いてもらえない話を事前に研修を受けた見知らぬ誰かに話すことにより安心感をもたらしていると考えられている。

今回取材を行った真宗教化センター しんらん交流館

電話を繋いだ先には

私は勇気を振り絞り「いのちとこころの相談室」に電話をかけた。電話が繋がると私が抱えている悩みについて話し出すように水を向けられた。相談員は話し始めた私に対して一節ごとに頷きを入れて聞いていた。一段落すると相談員は私が吐き出した情報の整理に取り掛かっていた。私に事実の確認を結び目を取るように施した後、深める質問を行なっていた。やりとりが続いていく中で終盤に差し掛かったが、未だ相談員からの意見や提案は何もなかった。あえてゆうなら「無理しないように」と結ばれた。たったそれだけのことだが心は徐々に安定してきた。仏教を教えることはないが、教えを基に柔軟に対応している姿が電話越しでも想像できた。

※私自身の悩みを聞いてほしいという思いがあったので、記事作成を兼ね実際に相談窓口に電話を掛けた。このような電話相談窓口に単なる好奇心で電話を掛けるなど相手方の迷惑とならないような節度を持った利用をお願いします。

電話相談に応じている僧侶(イメージ)

 


取材先|真宗教化センターしんらん交流館「東本願寺いのちとこころの相談室」
主に市民を対象とした宗派の活動を行っている。詳細はホームページ( https://jodo-shinshu.info/phone_entry/ )にて紹介されている。
※相談業務には守秘義務があり、守秘義務は守られたところで取材に応じていただいた。
取材者|山本祥也(やまもとしょうや)
立命館守山高校3年。小中学校では周囲に馴染めず悩んだ過去があり、地域や学校のカウンセラーにお世話になった。現在は大学生や社会人になった際、どのような分野で社会に貢献できるか模索中。

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